私の好きなミュージカルの一つに
「愛と青春の宝塚」があります。
戦前戦中の宝塚を描いた作品です。
戦前の華やかな宝塚の舞台。
タカラジェンヌたちは夢を語り、
厳しいレッスンに励み、トップスターに憧れました。
しかし戦争が激しくなると、公演は中止、
彼女たちは各地へ慰問に行くようになります。
華やかな衣装もステージもないところへ、
ろうそく一つ持って唱歌を歌うのです。
満洲へ慰問に行ったエピソードは、
印象深いシーンの一つ。
難病で余命いくばくもないタカラジェンヌの一人は、
最後まで舞台に立ちたいと願って満洲に来ました。
そこに、明日出撃するという部隊の兵士がいました。
彼は夜、一人で空を見上げて泣いていました。
眠れなかったタカラジェンヌは、彼の隣に座り、
わざと明るく振る舞う彼を抱きしめ、キスをするのです。
翌日、それがバレてしまった彼女は
「ハレンチだ!」と指導教官に叱られてしまいます。
けれど彼女は自分の死を宣告して、キッとして言うのです。
「私と兵隊さんは、若くして死を身近に感じてしまった者として、
慰め合いたかっただけなんです!」
前線に出た男と女、明日をも知れぬ命、
互いのぬくもりを感じ合うのは、せめてもの慰めであり、
生きる喜び、生きる実感でさえあるのかもしれない。
慰安婦とは少し違うかもしれないけど、
戦時中、こんなふうに互いに手を取り合う兵士と慰安婦も
きっといたことだろう。
そこには、もしかしたら男女をも超越した何かが
あったかもしれない。
切なくて悲しい。
けれど美しい。
イクメン不倫“元”議員の会見で
こっちまでゲスな気分になってしまった私は、
「愛と青春の宝塚」を観て心を洗浄いたしました。
これで清らかに明日の道場を迎えられそうです。